エヴァ監督・庵野秀明が語る「宮崎駿との決定的な違い」

「ニコニコ超会議2015」にエヴァンゲリオンの監督・庵野秀明さんが登壇し、「宮崎駿との決定的な違い」 について語りました。
庵野監督は宮崎駿監督のいいところは絵コンテであり、漫画『風の谷のナウシカ』は宮崎監督100%でできているから一番好きであり、自分の場合は絵コンテの完成度を低くし、どうおもしろくするかはアニメーターによって変わっていくと語っています。

「ニコニコ超会議2015」では、アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』監督の庵野秀明と、KADOKAWA・DWANGO会長でスタジオジブリ見習いの川上量生による対談が実現した。庵野氏はいかにしてアニメ作品を作っているのか? そして、彼自身が考える“宮崎駿氏との違い”とは――。

◆アニメは「計算」で作っている

アニメの「情報量」とは何か
庵野秀明氏

川上量生(以下、川上):庵野さんのコンテンツ作りを見ていると、科学的に、工学的に作っていますよね。

庵野秀明(以下、庵野):そうです。基本的には全部計算して作っています。

川上:最後は感性なんだけど、途中までは計算ですよね。

庵野:計算です。ほとんど理屈で作ります。理屈じゃないところが出てくるのがまたいいんですけどね。映像自体は科学的なものなので、理屈でできています。

川上:でも、理屈って学校で教わらないじゃないですか。その理屈をちゃんと持っている人は、全体でどれくらいいるんですか?

庵野:高校のときに何かを撮っていたら、そのときは理屈じゃないんですよね。それは感覚でやってるんだけど、その感覚はもともと自分の中にあったんじゃなくて、子供の頃に見ていたテレビや映画が、こんな感じで繋がっていたっていうのを記憶の感覚で作っているんです。それを続けていくと、理屈みたいなものが見えてくるんですよね。

川上:庵野さんが実写もやられている理由は?

庵野:自分で全部コントロールすると、自分で考えてる以上のものは出てこないんですよ。だから、それ以上のものが出るのはやっぱり実写のほうが多いですね。思いもよらないような絵は、実写のほうが出てきます。

◆「宮崎駿」と「庵野秀明」の決定的な違い

アニメの「情報量」とは何か川上:世間では、庵野さんは常に全力疾走で、最後に力尽きるまで作り続けるってイメージですけど、わりと妥協もしてるんですよね。

庵野:監督の1番のストレスは妥協だと思います。あらゆるところで妥協です。100%満足ってのはまずないです。とにかく下駄を履かせて、どう及第点に持っていくか。宮さん(=宮崎駿)も高畑勲さんも、それに尽きていると思います。

 宮さんの1番いいところはいつ見ても絵コンテなんですよ。宮さん100%なので、コンテが1番おもしろい。絵コンテから作品になっていく過程で、宮崎駿率が下がっていく。僕が宮さんの作品で1番好きなのは、漫画『風の谷のナウシカ』なんです。あれは漫画だから、作品が100%宮さんで構成されてるんですよね。

川上:宮崎駿しか描いてないですからね。庵野さんの場合も、絵コンテの完成度が1番高いですか?

庵野:僕の場合は、絵コンテの完成度を低くしてるんです。とにかく、おもしろさの要素だけを絵コンテに詰めて、どうおもしろくするかはアニメーターによって方向性が変わっていくんです。

川上:素材なわけですね。

庵野:コンテに全部描き込みすぎちゃうと、そっちのほうが面白くなっちゃう。コンテより面白くするには、コンテがある程度つまらないほうがいいんですよ。「これは面白い」「これがこういうふうになれば面白くなるんじゃないか」とか、スタッフのやる気を出しつつ、最低限の設計図であればいいんです。

 絵コンテが作品づくりのハブになればいいんですね。設計図じゃないんですよ。宮さんの場合は、絵コンテが完成予想図なんですよね。そうではなくて、これとこれがこう繋がったらおもしろくなるんじゃないかとか、その先にもっとおもしろくできる余地を残したい。

川上:基本的に宮崎さんは、絵コンテと同じものができますよね。庵野さんは生き物のように変わっていきますよね。

庵野:変えていきたいんです。ここは宮さんと全然違うところです。最初にイメージを作りたくないんですよね。それをすると到達点が見えちゃうんで。そうではなくて、どういうふうになるのかわからないけれど、こうしたほうが、こうしたほうが……っていうのはギリギリまで探りたいです。

 まぁ、大変なんですけど。ものを作るのは本当に大変です。ちゃんとしようと思ったら、さらに大変です。ただでさえものを作るだけでも大変なのに、それをちゃんとするとなったら本当に大変です。

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