宮崎吾朗監督「大倉庫は広いので二、三時間はかかるんじゃないでしょうか」「例えば庵野秀明作品、新海誠作品は、ジブリ美術館では無理でも大倉庫では扱える、というように。もう少し懐深くしてもいい」
ごちゃ混ぜ
「ジブリの大倉庫エリア」は、温水プールだった建物の中身を撤去して造ります。お客さんには、二階から入っていったん一階に下り、ぐるぐる回って二階から出ていただく計画です。もっとスムーズな動線も考えましたが、変えた。するっと出ちゃうと、引っ掛かるところが無いからです。
総合デザインを手掛けた三鷹の森ジブリ美術館は、一階から地下に下りて二階へ上がってもらうよう階段、部屋を配置していますが、計画段階では時計回りと反時計回り、どちらの動線が面白いか、宮崎駿とうんうん悩みました。結果、時計回りにしましたが、後で読んだ本によると、反時計回りの方が人間の感覚的にスムーズなんだそうです。時計回りは引っ掛かるというか、違和感がある。それが面白さにつながるんですね。大倉庫も「何か変だぞ」と感じながら、探検するように歩いてほしい。広いので二、三時間はかかるんじゃないでしょうか。
雰囲気は、ちょっとフェイクな感じの方が合うのかな、と。ジブリ美術館は、名前に「美術館」とあるので品の良さも求められますが、こちらは倉庫。大きな箱の中にすてきな物、怪しげな物、ごちゃごちゃと混ざっている方が面白い。
間口を広く
ジブリ美術館は、宮崎駿作品なんだと思うのです。個人の理想を極力、現実にするプロセスをたどっているので、作家性が強く出ています。でも、大倉庫は個人の作家性によるのではなく、アイデア、熱意さえあれば新しいことができるよう、間口を広くしておきたいと考えています。
これは僕の個人的な思いですが、先々、企画展示を替える際はジブリ作品にこだわらず、アニメーション全体に対象を広げたっていい。例えば庵野秀明作品、新海誠作品は、ジブリ美術館では無理でも大倉庫では扱える、というように。もう少し懐深く、「中日ドラゴンズの栄光」展だっていいし、愛・地球博が開かれた場所だから、欧州で始まった万博がどういう形で世界に受容されてきたのかを紹介する「万博の歴史」展だっていい。
展示に限らず、建物や子どもの遊び場についても不断に手を入れていく姿勢が大事だと思います。「お金をかけて造りました。あとは維持するだけです」では、だんだんすすけていくというか、元気が無くなる。面白そうだ、やってみようということに挑戦できる場でありたいと思います。
中身を充実させられるかは、オープン後のやり方次第。倉庫の容量が足りなくなるほど、豊かになっていけばいいですね。