<月刊ジブリパーク>青春の丘エリア:十九世紀末の空想科学をイメージしたエレベーターに改装。近くに地球屋を建て、内部も家具と時計修理のお店にバイオリン工房が併設されているという劇中の設定を再現。「猫の恩返し」に登場する猫の事務所も設置。
ジブリパークの構想、理念を宮崎吾朗監督(54)に聞くインタビューの五回目は「青春の丘エリア」について。愛・地球博記念公園(愛知県長久手市)のメインの入り口付近にあり、導入部の役割を果たします。エレベーター棟の衣替えをはじめ、高揚感をかきたてる細かな仕掛けを考えているようです。 (聞き手・花井康子、古谷祥子)
作品の空気 織り交ぜて
エレベーター棟は機能を残し、外装だけ直します。十九世紀末の空想科学のイメージ。ジブリと言えばトトロもあるけど、宮崎駿の作品でいうと空想科学的な世界もある。空想科学の始まりは万博の始まりのころ。万博の記念公園だし、意外と結び付くのでは。それに、初めて来るお客さまもいるので、目印にもなるように、今よりちょっと背を高くしてシンボリックなものにしたらどうかと考えました。
心躍る眺望
上部が展望台になっているので、「魔女の谷」や「もののけの里」になるエリアまで見えます。「あそこにも、ここにも」と眼下に見えると、いや応なしに気持ちが高ぶりますよね。そこでエレベーター棟の近くには、映画「耳をすませば」に出てくるアンティークショップ「地球屋」を建てることにしました。
丘から下っていく眺めのいい所なので、劇中でも斜面に立っている地球屋がいいんじゃないかと。高低差を生かして建てるので、眺める方向によって建物の表情が違います。内部も、家具と時計修理のお店にバイオリン工房が併設されているという劇中の設定を再現する予定です。
建物は、本当にあったらこうだろうという想定と、劇中により近づけるための創作のミックスです。「耳をすませば」と言えば、まさに青春というような映画だったので、エリアも「青春の丘」と命名しました。それで、地球屋が一軒だけあるのもさみしいと、原作者が同じ「猫の恩返し」に出てくる小さいおうちも近くに造ることにしました。主人公の女の子が猫サイズになるという設定なので、劇中のように小さく造ります。中には入れませんが、窓からのぞくとちゃんとしつらえてあります。
あえて古く
残念ながらこのエリアは動線から外れているので、今は行く人があまりいません。でもここは万博の時に、各自治体がホストになって各国と交流を深めた「一市町村一国フレンドシップ事業」の記念広場でもあるので、当時を思い出す一助にもなればと願います。
いずれにせよ、建物だけだと風景にならないので、周りも考えて造っていかないといけません。劇中の雰囲気や気分も含めて造る方がよりおもしろく、建物も映えるんです。
ジブリって、ちょっとノスタルジー。最先端、最新式というよりも、逆にちょっと古い方がいい。定着したものはそれ以上、古くならない。何十年かたって、「あっという間に陳腐になった」とはしたくない。最初からなるべく、土地になじむようにしたいと考えています。